【完】恋文

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君の時間に限りがある事も もうすぐ消えてしまう事も 声が聞けなくなる事も 笑顔が見れなくなる事も 僕は知っていたのに その限られた時間で、君に愛を伝えることができなかった僕は 君の残された時間が僅かだと 知らなかった、のと同じ事だ 綺麗な言葉でも、少し凝った文でも、君の好きな花言葉でもなく 僕が伝えるべき言葉は一つだったのに。 ----- カスミソウ   『無垢な愛』 君にぴったりだ 手紙と一緒に添えて君に送ったのを覚えている 薔薇の花 1本   『一目惚れ』 君が花言葉が好きだと言うから、必死になって覚えたんだ 花言葉や、飾った言葉で遠回しに愛を伝える僕とは違い、君はストレートな言葉を綴る ストレートな言葉はどこか恥ずかしい 君が消えてしまう1ヶ月前の、君からの手紙 『真っ直ぐな言葉で気持ちを伝えてほしい』 それだけ書かれた手紙が届いた いつもならすぐに返事を返したのに、僕はなかなか返事ができずにいた 気持ちを伝えるだけなのに 難しく考えていた 僕の言葉が君の心に残るとするなら、とっておきの言葉で伝えてあげたかったから こんな素敵な言葉を貰ったと 自慢できるような そんな言葉を贈りたかった       僕は大馬鹿者だ
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