【完】恋文

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君は最期を悟っていたのかい? だから僕の気持ちを言葉にさせようとしたのかな 意気地なしで足踏みしている僕に 気持ちを伝えるチャンスをくれていたのかな 君は眠りにつく前に何を想ったの?そんなことさえ聞くことも、知ることもできない 真っ直ぐに伝えればよかった 『君が大好きだ』 そう一言言えばよかった たった数文字じゃないか 何度も何度も、どの手紙の最後にでも……毎回書いてもいいくらいの言葉なのに カッコ悪い文章でも 綺麗じゃなくても 君はきっと、その一言で喜んでくれたのに 『大好きだよ』 いつもの便箋にそう書いた 簡単に手が動いた あんなに言葉を選んで悩んでいたのに 大好きだと溢れ出した でももうこの手紙を君が読んでくれる事はないんだね たった数文字 何を躊躇ってきたんだろう 今なら書くことができるのに ---- 今日も僕は君に届かない手紙を書いている 相変わらず回りくどい表現の仕方に、今日あった事を日記のように綴っている 君の好きな花言葉も添えて 今日も僕は君を想っているよ 君を想い綴った手紙は 君に贈ることもないまま、僕の部屋を埋め尽くしている
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