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もう辺りは暗くなってきていた。
もう座ってからどのくらいの時間が経ったのだろう。暖かかった潮風も今では突き放すような寒さを孕み、それは厳しく叱るお母さんのように帰宅を促しているようにも思えた。
気分も大分落ち着いていた。やっぱりお母さん岩の力は凄い。萎んで、萎んで、萎れきって、枯れた私の心に活力がどんどん芽吹いてくるのを感じる。やっぱりここに来て正解だった。ありがとう。お母さん。
私は胸に手を当て、自分を奮い立たせた。
きっと大丈夫。立ち向かえ。頑張れ私──────。
ふと背中が温かく感じた。
振り返ると、強く温かい風が私を包んだ。
草木がザワザワと震えている。
頑張れ。あなたならきっと出来る。
幻聴かと思った。でもその声は繰り返しはっきりと私の鼓膜に響いた。
さらに大きな声が聞こえた。
それは崖の下、海からだった。
頑張れ。俺達がついているぞ。
大きな波が崖に激しく衝突しながら叫んでいる。
たくさんの声が私を励ましていた。
そうだ。私は一人じゃない。私にはいつも仲間がついている。負けてなんかいられない。
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