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お母さん岩
断崖絶壁の崖が続く海岸線の道路をひた走る。
長々と続いていたテンノウメの群落を過ぎると、背の高い木が密生した森へと行き着く。
獣道と言ってもいいような隘路を、背の高い草を掻き分けながら進んでいく。すると、鬱蒼とした草木に覆われた視界が突如開ける。
潮風がまるで手荒い歓迎のように身体を強く撫でつけ、最初はあまりの風の強さに目を細めるものの、やがて慣れたら遮る物が一つもない広大な空と大海原が果てしなく広がる圧巻な景色に心を奪われる。
その景色を見守るかのように、崖の突端に岩肌の滑らかな大きな丸い岩がある。昔の人間が何かを祀る為に人為的に造り上げられたものなのだろう。
私はその岩を「お母さん岩」と呼んでいる。
私は小さい頃から嫌なことが起こると、このお母さん岩の上に座って時間を過ごしてきた。不安な時や、心細い時や、泣きたい時、私はこのお母さん岩に会いに行った。
気のせいかもしれないけど、お母さん岩は暖かい。このお母さん岩に座ると、不思議といつも元気になった。
私にとってこのお母さん岩は、なくてはならない唯一無二の存在だ。
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