一話

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 ショウが終わり、さっそくオールトが感想を聞いてきた。 「どうだったかな?」 「……結構面白かった、かな」 「そっかあ、ありがとね」  初めてショウを見て新鮮だったのもあるが、エルスは何だかんだ言って楽しく観賞していた。  技術面ではそこまで問題なさそうだし、これならどうにかなるかも、と甘く見積もる。あとは客さえ呼び込めればいいのだ。 「ねえ、ショウの中身っていっつもこんな感じ?」 「特に変更はしてないねえ」 『むしろ減るばっかり―』  背広から根っこでよじ登ってきたラーナが付け加えた。  人員が減るほど、演目も減ったという事なのだろう。  何度もこの街に訪れる観光客は多く、評判も大事だ。内容が良くても、いつも同じでは目新しさがないだろう。 「じゃあ、色々と変えてみたりとか」 「部外者が口出さないでくれねェ?」 「そうだそうだー」  エルスの提案を遮るようにして現れたのは、生首男と犬耳少年だった。男はへらへらと笑いながら肩を竦める。 「こんなガキが新団長とか、オレは認めてねえよ」 「そうだそうだー!」 (この男の人もだけど、後ろの子もなんかむかつくわね)  加勢のつもりなのか、男の子は生首男の背中から顔を出して、こちらにべーと舌を出してきた。  あのねえ、とエルスはむすっとして反論する。 「そりゃあ知らない子供が急に団長になるとか、無理があるとか、信用できないとか、すぐに従うのってむしろヤバい気が……うん、ないわ……」  冷静に考えてやっぱり無理がある。あるのだが、任命した張本人は親指を立てて頑張れと無言のエールを送っているので、兎に角と強引に気持ちを切り替える。 「もうあたしが団長になっちゃったんだから、ちょっとは協力してよ!」 「ヤダね」 「やだねー」  ばっさり拒否して、二人はとっとと部屋に戻って行ってしまった。  あちゃーと呟くラーナの声が虚しく響く。
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