2人が本棚に入れています
本棚に追加
ショウが終わり、さっそくオールトが感想を聞いてきた。
「どうだったかな?」
「……結構面白かった、かな」
「そっかあ、ありがとね」
初めてショウを見て新鮮だったのもあるが、エルスは何だかんだ言って楽しく観賞していた。
技術面ではそこまで問題なさそうだし、これならどうにかなるかも、と甘く見積もる。あとは客さえ呼び込めればいいのだ。
「ねえ、ショウの中身っていっつもこんな感じ?」
「特に変更はしてないねえ」
『むしろ減るばっかり―』
背広から根っこでよじ登ってきたラーナが付け加えた。
人員が減るほど、演目も減ったという事なのだろう。
何度もこの街に訪れる観光客は多く、評判も大事だ。内容が良くても、いつも同じでは目新しさがないだろう。
「じゃあ、色々と変えてみたりとか」
「部外者が口出さないでくれねェ?」
「そうだそうだー」
エルスの提案を遮るようにして現れたのは、生首男と犬耳少年だった。男はへらへらと笑いながら肩を竦める。
「こんなガキが新団長とか、オレは認めてねえよ」
「そうだそうだー!」
(この男の人もだけど、後ろの子もなんかむかつくわね)
加勢のつもりなのか、男の子は生首男の背中から顔を出して、こちらにべーと舌を出してきた。
あのねえ、とエルスはむすっとして反論する。
「そりゃあ知らない子供が急に団長になるとか、無理があるとか、信用できないとか、すぐに従うのってむしろヤバい気が……うん、ないわ……」
冷静に考えてやっぱり無理がある。あるのだが、任命した張本人は親指を立てて頑張れと無言のエールを送っているので、兎に角と強引に気持ちを切り替える。
「もうあたしが団長になっちゃったんだから、ちょっとは協力してよ!」
「ヤダね」
「やだねー」
ばっさり拒否して、二人はとっとと部屋に戻って行ってしまった。
あちゃーと呟くラーナの声が虚しく響く。
最初のコメントを投稿しよう!