2人が本棚に入れています
本棚に追加
「うーん、みんな頑固だねえ」
「むしろそれが普通の反応だと思うわ!」
向こうの気持ちも、大変よくわかる。しかしこれでは何もできない。
早くも前途多難な状況に、エルスは呻きだしたい気分だった。
せめて一人くらい協力してくれる人が欲しい。無論、生温かい応援だけよこしてくる二名を除いて、だ。
「あの二人以外に、団員っていないの?」
エルスの問いかけに、オールトはそうだねえ、と髭を撫でながら答える。
「二人いるけど、どっちもちょっぴりシャイだからね。話しやすいのはあの二人だと思うよ」
「生首男も!?」
表立って新団長反対派の二名の方が、むしろ攻略しやすいとは。生首男の方は第一印象のインパクトと嫌味な口調のせいで、むしろかなり話しにくいというのに。
「やっぱり、同年代の子の方が話しやすいよね。シオ、おいでー」
「なんだー?」
ステージ衣装からさっさと着替えた男の子が、呼びかけに答えて部屋から出て来た。
ふさふさの犬耳が頭から生え、更にはズボンからすらりと犬のような尻尾が出ている。見た目は怖いというより可愛くて、凶暴じゃなさそう、とエルスは内心ほっとしていた。
「君たち年が近そうだし、話が合うんじゃないかな」
「あたし、エルスって言うの。仲良くしてくれる?」
なるべく友好的にと、尻尾を目で追いそうになるのを堪えて改めて笑顔で名乗ると、くりくりとした茶色い目がこちらをじっと見つめる。そして突然、ぐいっと顔を近づけてきた。
「おまえ、へんなにおいするなー」
「きっ、急に近寄らないでよヘンタイ!」
エルスがびっくりしてぐいぐいと突っぱねると、押し返された顔がなんだとーと文句を言ってきた。
「へんはおまえだー!」
「それはそっちでしょ、犬みたいなつけ耳つけちゃって!」
「つけ耳じゃない! 本物のオオカミ耳だ!」
「どっちも大して変わんないでしょ!」
「オオカミの方がカッコいい!」
「まあまあ、仲良く仲良く」
『ふれんどりーにー』
「ムリ!!」
取りなすような言葉に、二人は声を揃えて言い放った。
最初のコメントを投稿しよう!