一話

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「うーん、みんな頑固だねえ」 「むしろそれが普通の反応だと思うわ!」  向こうの気持ちも、大変よくわかる。しかしこれでは何もできない。  早くも前途多難な状況に、エルスは呻きだしたい気分だった。  せめて一人くらい協力してくれる人が欲しい。無論、生温かい応援だけよこしてくる二名を除いて、だ。 「あの二人以外に、団員っていないの?」  エルスの問いかけに、オールトはそうだねえ、と髭を撫でながら答える。 「二人いるけど、どっちもちょっぴりシャイだからね。話しやすいのはあの二人だと思うよ」 「生首男も!?」  表立って新団長反対派の二名の方が、むしろ攻略しやすいとは。生首男の方は第一印象のインパクトと嫌味な口調のせいで、むしろかなり話しにくいというのに。 「やっぱり、同年代の子の方が話しやすいよね。シオ、おいでー」 「なんだー?」  ステージ衣装からさっさと着替えた男の子が、呼びかけに答えて部屋から出て来た。 ふさふさの犬耳が頭から生え、更にはズボンからすらりと犬のような尻尾が出ている。見た目は怖いというより可愛くて、凶暴じゃなさそう、とエルスは内心ほっとしていた。 「君たち年が近そうだし、話が合うんじゃないかな」 「あたし、エルスって言うの。仲良くしてくれる?」  なるべく友好的にと、尻尾を目で追いそうになるのを堪えて改めて笑顔で名乗ると、くりくりとした茶色い目がこちらをじっと見つめる。そして突然、ぐいっと顔を近づけてきた。 「おまえ、へんなにおいするなー」 「きっ、急に近寄らないでよヘンタイ!」  エルスがびっくりしてぐいぐいと突っぱねると、押し返された顔がなんだとーと文句を言ってきた。 「へんはおまえだー!」 「それはそっちでしょ、犬みたいなつけ耳つけちゃって!」 「つけ耳じゃない! 本物のオオカミ耳だ!」 「どっちも大して変わんないでしょ!」 「オオカミの方がカッコいい!」 「まあまあ、仲良く仲良く」 『ふれんどりーにー』 「ムリ!!」  取りなすような言葉に、二人は声を揃えて言い放った。
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