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大きな角砂糖位の大きさのそれは、全身が植物の茎のように緑色だった。
一応人型らしく、更には頭のてっぺんからは花が咲いていて、言葉を選んで例えるなら可憐な花の精のように見える。
その謎の植物らしきものが、紅茶の中で元気よく背泳ぎをしていた。
(んんんんん?)
初めて見た珍妙な生物にエルスが固まっていると、視線に気付いたのかそれは泳ぐのをやめ、こちらに向けて腕の先に生えている葉っぱを振った。
『やっほー』
「飲まないのかい、エルスちゃん?」
「えっ? あっ、は、はい、の、飲みますっ!」
変な物体が浮いているから飲みたくない、なんて白状しては、入団させて貰えないかもしれない。
というか注いだ張本人はこれに気付いていないのか、いやもしかしてこれは幻覚なのでは、大体喋る植物なんているわけないしと、エルスは物申したくなる気持ちを一生懸命我慢していた。
『ちょっとー気付いてんでしょー、無視ってどうなのー』
謎の声をガン無視して、エルスは恐る恐るカップを傾ける。それに伴い、謎の物体が口元へと迫るスリリングを味わう羽目になった。
『きゃーーーーー』
緑生物を飲み込む前にちびりと一口飲むと、エルスは(極力)行儀よくテーブルの上にカップを置きなおした。
気を取り直すように、発言を再開する。
「ま、まだ皆さんと違って何の芸もできませんが、これから頑張って覚えます。雑巾吹きでも小間使いでも何でも構いません、どうかここで働かせてください!」
「じゃあ団長ね」
「はい?」
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