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聞こえた言葉にエルスは固まる。
今この人、なんて言った?
「いやあよかった、そろそろ代替わりしたかったからね、君みたいな人間は丁度良かったんだよね」
「え、あの、今なんて」
「団長。トップ。おめでとね」
『おめでとー』
手のひらの如く葉っぱをぺちぺち合わせ、緑の生物が祝福している。エルスが呆気に取られていると、重大発言をあっさり放った人物はよっこらせと立ち上がった。
部屋の隅に置いてあったマイクらしきものを何度かつつき、オールトはこほんと声を出す。
どうやらスピーカーと繋がっているらしく、きいんと部屋中に声が響く。
『団長からのお知らせです。今からここの団長は、人間の女の子、エルスちゃんになりました。僕は元団長になるのでみんな仲良くね。以上』
とんでも爆弾発言をばらまき、元団長はさっさとマイクの電源を切った。
未だ唖然としているエルスからさっとカップを掬い取り、窓際に置かれた空のコップへと残りの液体をかける。その途端、にょっきにょっきと芽が出て蕾が膨らみ、さっきの緑色の生物が生えてきた。先程のようにひらひらと小さな葉っぱの手を振っている。
『はろー、新だんちょー』
「この子はラーナ、よろしくね」
早速の風変りな人物(?)紹介に、色々とパンクしかけたエルスはまずは一言突っ込んだ。
「危うく飲み込む所だったんですけど!?」
「大丈夫、ラーナは逞しいからね、そのうち口から這い出てくるよ」
怖い事実を知り、飲まなくてよかったと心底思った。
ラーナと呼ばれた謎の生物は、よろしくーとこちらへマイペースに挨拶をしてくる。
「あ、あの、その謎の未確認生物は……?」
「この子はねえ、アルラウネみたいなものかなあ。うちのマスコットなんだ」
「へ、へええ……そーなんですかあ……」
この場に及んでも、まだエルスは猫かぶりを捨てきれていなかった。
とっとと我に返り、この場を全速力で逃げ出さなかったことを、彼女は数秒後に後悔する羽目になる。
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