プロローグ

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「待ってよ、まだ団長になるなんて言ってない! 大体なにあれ!? 変な耳に変な首って」 「皆人間じゃないからね」 「じゃあ何よ、化け物ってこと!? そんなのいるわけ」 「実はいるんだよね」  さらっと衝撃の事実を明かされ、エルスは驚きを抑えられなかった。とはいえ自分の目で見てしまったものを幻覚だと切り捨てる事もできない。  一方ラーナは茎をくねらせながら元団長へと話しかけた。 『だんちょー、この子本当に後継ぎにしちゃうのー?』 「うん。それと僕はもう団長じゃないからね」 『はーい、オールト元だんちょー』 「待ってってば! だから、誰も団長になるなんて言ってませんから!」  元々は軽いバイト代稼ぎのつもりで来たのだ。 それが何故急にトップの座に据えられるのか。  そうだよねえと、団長は分かっているとばかりに頷いてから、ぐっと親指を立てた。 「まあがんばってね!」 「えええええええ!?」  完全丸投げ、拒否権なしの宣告に、エルスは今日一番の盛大な声を上げた。 (ムリムリ絶対ムリ、あたし子供だし、ショウとか分かんないし、こうなったらとっとと逃げて……ん?)  逃走を図ろうとして、待てよと考え直す。  団長。つまりはここのトップ。ナンバーワン。 「団長ってことは、お給料とかも、一番高いとか?」 「あー給料ね、そういう割り振りも好きに決めちゃっていいから」 『ぼろもうけー』  つまり上手くすれば、ショウの利益を大半懐に収めちゃっても構わないのである。なんてうまい話だとエルスは内心ガッツポーズをした。既にメンバーはいるようだから、ただショウを開くだけで儲かるのでは。 「ま、まあ、どうしてもって言うなら、やってみても、いいかな?」 『やったー』 「よろしくねー」  二人の軽い拍手に乗せられる形で、エルスも段々と乗り気になってきた。  いやあよかったよかったと、オールトは肩の荷が下りたとばかりに微笑む。 「今日は来客の予定があってねえ。代替わりが間に合ってよかったよ」 「え」  実にいいタイミングで、とんとんと軽く扉が叩かれた。  次いで、スーツ姿の若い男女が入って来る。 「失礼、役所の者です」 「やあやあ、久しぶり。あ、この子は僕の孫で、今日から団長になったエルスちゃんだから」 「はい?」  皺の刻まれた手で両肩を優しくもがっちりつかまれ、エルスはひきつった声を上げた。
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