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優也さんは、私があんな写真を送ったことを全く責めることも尋ねることもなく、レストランに向かう。
なんで?
私、このまま黙って甘えてていいの?
私は、不意に足を止めた。
「あの、優也さん! 私、あの、その、ごめんなさい!」
私は、ブンッと勢いよく頭を下げた。
「何が?」
優也さんは、足を止めると、驚いたようにこちらを見る。
「だって、あんな嘘の写真……」
私は、いたたまれなくて、顔を伏せた。
嘘をついた私が泣いちゃいけないと思いつつも、申し訳なくて、涙があふれてくる。
「ああ、そんなこと。俺の方こそ、ごめん。麻弥ちゃんがルックスにコンプレックスがあるとは思わなくて……。でも、写真が加工されてるのは、見てすぐに分かったから、あんなの嘘のうちに入らないよ」
えっ?
すぐに分かった?
私は、驚いて顔を上げる。
「俺、これでも絵を描いてるんだ。だから、全体のバランスがおかしいことはすぐに分かる」
あ、そういうものなの?
「俺は、綺麗な子の写真が欲しかったわけじゃなくて、麻弥ちゃんの写真が欲しかったんだ。後で、2人で一緒に写真撮っていい?」
えっ?
優也さんと?
優也さんと並んだら、私が太ってることもブスなことも目立っちゃう。
そんな葛藤を優也さんは、全て知ってるかのように続けた。
「誰にも見せないって約束する。俺だけの宝物にするから」
優也さんの宝物?
こんな私との写真が?
信じられなくて、私は、ぼんやりと優也さんを見上げた。
「俺、ずっと麻弥ちゃんが好きだった。感性が似てて、優しくて、明るくて、穏やかで……。そんな麻弥ちゃんの内面が好きなんだ。でも、残念ながら内面を写すカメラはなくてね。だから、外見だけでも一緒に撮らせて」
こんなふうに言われて、断ることなんてできない。
私は、こくりとうなずいた。
「ありがとう。さ、とりあえず、ご飯、食べに行こ」
優也さんは、微笑んでまた私の手を握ると、ゆっくりと歩き始めた。
その時の手の温もりは、結婚した今でも忘れることはできない。
─── Fin. ───
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