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 ミシェルは、とても真面目な青年です。毎朝太陽が昇る少し前に起き、まだ暗い外へと歩いていくのです。  ミシェルは街外れの小さな小屋に住んでおり、そこは少し歩けば森へと繋がっています。その森を一時間ほど進んでいくと、彼が世話をしている不思議な木があるのです。一本の月桂樹のようなその木は、まるでお星様のように輝く「星の実」をつけるのでした。  毎朝夜明けと共に水をやり、伸びすぎた枝を一本一本切ってやります。この枝たちを放っておくと、やがてそこから黒くしおれてしまい、木が駄目になってしまうのでした。しかし、こうして丁寧に世話をして、実を一つだけ木に残しておけば、星の実は何度でも新しくなってくれるのです。 「よ、ほい、さっと」  枝を切り終えたミシェルは、いよいよ星の実を収穫します。星の実は収穫してから翌日の朝まで、その優しい輝きを保ちます。輝きが失せてしまうと、味も急激に悪くなって、まるで毒キノコのような味に変わってしまうのです。  ミシェルは星の実たちをそっと籠に入れ、一つを朝ご飯として食べることにします。 「うーん、最高!」  星の実はよく熟れた桃のように果汁をたっぷりと蓄え、りんごのように爽やかな香りで、洋なしのように滑らかな舌触りで、オレンジのように甘酸っぱい味がします。  果物が大好きなミシェルですが、自分が世話をしている星の実よりもおいしいものはないだろうと自負しています。このたった一本の木は、なくなってしまった両親から受け継いだものなのでした。 「さあ、今日も街へ行くぞ」  煌々と輝く籠を背負い、ミシェルは今日も街へと歩きます。
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