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一田 結
私が彼に初めて出会ったのは、ついこの間。
学級委員になった初日のことだった。
中学三年生になり、学級委員となった私は、先生からクラスの名簿作りを頼まれた。
「じゃ、悪いけど山内、頼むな」
「わかりました」
放課後残って作業か。
ちょっと損した気分。
でも私は、淡々と仕事をこなす学級委員である必要がある。
帰りのHRの終了を知らせるチャイムが鳴るのを聞きながら、名簿作りの作業を始める。
ええと…一番最初は?
相川一さん。
あいかわはじめ…と。
「次は、明石未来さん」
ノートにシャーペンでサラサラと書いていく。
早く終わらせて帰って、アニメでも見よう。
「えっと、一田結さん」
「呼んだ?」
ガバリとドアの方を見ると、一田結、その人が立っていた。
まだクラスメートの名前を覚えたわけではないが、端整な顔立ちだったので印象に残っていた。
き、聞かれてた!?
「いつから!?なんで!?」
「いや、ついさっき。忘れもんして」
「あ、そう…」
心臓がバクバクいってる。
恥ずかしい…。
「何してんの?」
「め、名簿作り。先生に頼まれて」
一田くんが私の手元を覗き込む。
うわ、男子とこんなに近づいたことないんだけど。
一田くん、まつ毛長い。で、女子である私より目が大きくて綺麗だ。
琥珀色のべっこう飴みたいな瞳がノートの上を行き来する。
「ふーん…大変だな。手伝うよ」
「え?い、いいよ、大丈夫」
「手伝うって。残業してんの見つけて放置は無理でしょ」
一田くん、優しいんだな。
「俺、名前呼び上げるわ」
「ありがとう。助かる」
私は一田くんから視線を外し、シャーペンを握った。
と、一田くんが口を開く。
「山内、そんな顔もできるんだな」
「え?」
私、そんな変な顔したっけ?
「ずっと無表情だったから、てっきりずっとそうなのかと。」
一田くんが首を傾げた。
「なんで、いっつも無表情なの?笑ってる方が可愛いと思うけど」
か、可愛い!?
会って初日に何てこと言うんだこのイケメン!
「ね、なんで?」
「それは…気持ち込めたら、みんなの気持ちぐちゃぐちゃにしちゃうから」
そう、ぐちゃぐちゃにしちゃうの。
私は、セルモキネシスだから。
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