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入学式
「母さん、行ってきます。」
スクールバッグを持って、玄関を飛び出す。
暖かい、春の日差しが舞い降りてきて、そこに、微かな春の匂い。
それをめいっぱい吸い込んで、歩く。
進学した。今日は山手中学校の入学式。
心躍る者も居れば、新しい環境への不安を持つ者もいる。
僕は、前者。期待に胸を膨らませている。
隣町から引っ越してきた僕には、この町に友達は居ない。
別に、友達なんて必要ない。勉強して、部活動に励んで、高校に進学するだけだ。
期待に胸を膨らませる。なんて言ってはいるが、やっと少し、大人に近付いたという思いだ。
何も、特別な事など無いというのに。
桜が咲き誇る道を歩きながら、辺りを見回す。
ここら辺はあまり歩くことがなかった。
気付けば中学校の門に着いていて、大きな入学式という看板が目立っている。
此処が、僕の通う、新しい学校。
バッグを肩に掛け直し、大きく深呼吸をしてから、門をくぐった。
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