一夜目

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一夜目

 いつの日だったか夢を見た。死ぬ夢だ。なんだか見覚えのある景色である。そして覚えのある気持ちに今は支配されている。  私は今日死んでしまおうと思っている。そして今屋上にいる。あいつらと私がいた場所だ。私が「これは夢。悪い夢。明日目が覚めたら皆んなと仲良くなっている。」そう思いながら毎日を過ごした建物だ。今日はあいつらだけになるだろうが、じきにあいつらも消えるだろう。遺書も書いた。最初で最後の親に宛てた手紙になってしまった。白い服が似合う純粋な子だと褒めてくれた親には申し訳ないほど歪んだ感情で逝くことをも詫びた。親不孝者であるとつくづく思う。しかし、私は決心した。  私は、安らかな天に向かう為地面へ飛びたった。足を離したすぐに後悔の念が浮いてきた。そのまま身体も浮かしてくれないかと後悔した。浮足立たず地に足つけて考えれば、よかったと思った。石のように重い決意もお遊戯会の発泡スチロールのようなものだった。しかし、いくら考えを変えようと地面は近づいてきた。    私に似合う白の衣装を着ることになったが羽   はつかなかった。
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