三夜目

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三夜目

 私は、その夜死んだ。  私は、田舎のちょっとした富農の家に生まれた。そこは、あまり好きではなかった。家の親は、互いに互いを嫌っていたし、兄弟とは、全員とは仲良くなかったから、いつも冷たい空気が、家の中には、流れていた。しかし、私の、一つ下の末弟はいつも同じ部屋に居たこともあって仲が良かった。  食事はいつも苦痛だった。お腹が空いたことなんてなくて、いつも食べなければいけない、でなければ死んでしまう。そう思って食べていた。やがて成長してきて、大学に行くことになった。私は、やっとここから抜けれると思った。が、しかし、寂しい気もした。なぜだったのだろうか。  大学に行くと最初は、真面目だったが、皆来なくなったり、人と酒屋に入り浸るようになった。私にも、友達ができた。その友人は、私に、共産主義と言うものを教えてくれた。私は、興味は無かったが、(今思うと私は、興味がなくとも洗脳でもされていたのだと思う)その団体で活動して行くと、信頼されていき大きな仕事を任されるようになってきた。まさに夢見心地出会った。そして、彼らと活動をしているうちに、あることに気づいた。いや思い出したと言う方が適切だろう。私は、富農の子だと。彼らと活動してきてはならないと、私が共産主義の一番の敵であり憎まれる存在であると。そして、その罪を償うため。共産主義のため。私はいてはダメだと思った。自分が富農の子であることや、家族へ危険な運動に参加したことを詫びる手紙を書いた。そして、睡眠薬を飲んで、自殺を図った。何もない真っ暗な空を見て最後にちょうどいいと思った。目が覚めると、いつも共産主義の運動をしていたアジトの天井を見ていた。聞くと時間も何日も経っていた。意識が、記憶が、無くなりこの世から消える。そのことが怖くなった。死ぬ事に恐怖を覚えた。  私の記憶は、ここまでである。
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