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第一話:プロローグ
王国中から、貴族や資産家の子息・令嬢、そして一部の才ある平民が集められた、王立学院。国の未来を象徴する存在であるその広大な敷地の片隅で、その少女は土にまみれながら、糞や食べ残しの処理をしていた。
決して広いとは言えない飼育舎の中で、大小様々な「魔獣」に囲まれながら作業に没頭していた彼女は、遠くから聞こえてきたある音に首をかしげる。
「今の……雷?」
予期せぬ轟音に、まさか通り雨かと慌てて外の様子を見に出るが、晴れ渡った青空はますます彼女の疑問を深めた。
次の瞬間、今度は近くでまた雷音が鳴る。思い当たる節があった彼女は駆け足でそちらへ向かった。
林を一つ抜けた先のやや開けた広場を、木々の隙間に隠れるようにして覗く。そこでは、何とも凄惨な光景が繰り広げられていた。
既に雷に打たれた後なのか、十数人の生徒が、服の至る所が焦げた状態で横たわり、苦しそうにうめき声をあげている。数人立っている者も、服が汚れたり破けたりしており、怯えるように一点を見つめ震えている。
彼らが見つめる先から、一人の女生徒が現れると、彼らは悲鳴を上げた。
「い、いい加減にしてくれよ! ちょっと貴族院の広場で遊んでただけじゃないか!」
一人の男子生徒が叫ぶ。
立っている数名も激しく頷き、批判的な視線をその女生徒へと向けた。
その瞬間、稲光が走り、叫んでいた男子を激しい閃光が襲う。光が治まった時、既に男子生徒は倒れ、体からは白煙が立ち上がっていた。
「ひいいいぃぃぃっっ!!」
「酷すぎる、あんまりだ!!」
踵を返し逃げ出す残りの数名。しかしその望みもかなわず、彼らはその場で激しく転倒する。
何と、彼らの両足は、まるで足かせのように氷に覆われ、身動きが取れなくされていた。
もうどうしようもなくなった彼らは、許しを請うように女生徒の前に這いつくばる。
「許してください!」
「ごめんなさいぃ! もうしません!!」
女生徒は、見下すような冷たい視線を彼らに向けながら、手のひらを掲げる。彼女の手のひらから複雑な文様の魔法陣がぼんやり光って浮き出ると、生徒たちの足かせとなっていた氷が音を立てて砕け、消滅した。
自分たちは見逃してもらえるのかと、安堵の表情を浮かべる生徒たち。しかしその希望は、彼女が口にした言葉で完全に潰え、彼らは再びその場に這いつくばることとなる。
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