きらめく星に眠る

8/15
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「若い娘にしつこくするんじゃないよ。ババアにも話を振ってやる礼儀は見せないのかい?」 「ええ……? おばあさん、名前は?」  永遠は少し嫌そうに尋ねた。 「早苗だよ、早苗。こっちはひかりだ。わかったら無駄口たたくな。体力が削られる」  確かにそうだ。晴れているせいでいつも以上に暑い。気温なんてもう知りたくない。とにかく進む。足だけを動かす。それだけに集中する。  周りの空気が変わったのは、わたしたちが会話をやめてすぐのことだった。  こんな感覚は初めてだった。  空気が振動するような、奇妙な音といえばいいのか。景色に割れ目が入るような、一瞬の違和感が走った。  それは瞬く間に異変を知らせた。  周囲の逃亡者たちが動揺する声。何かが起きた。何かを感じる。正体不明の焦り。 「『列車』だ!」  突然、永遠が叫んだ。 「『列車』が来たんだ! 予定よりずっと早いぞ!」  永遠の叫び声は一気にみんなの耳を震わせた。雰囲気が一変する。びりびりした緊張感が辺りの意識を電流のように痺れさせる。 「見ろ! あれだ!!」  永遠が指さす方を見た。  窓ガラスに亀裂が走る時の音に似た、耳障りな轟音とともに、空が割れた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!