2人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
状況は刻一刻と悪くなっていた。地球はもうもたない。みんなが感づいていることだ。海水の温度の上がり方が尋常じゃない。南の島は多くが水没してしまった。暑い。タバコに逃げないとやってられない。
「政府からお達しがあったの」
おばあちゃんの肩がぴくりと動いた。
「うちのところに『列車』が来るのは十二月だって」
しばらく沈黙が続いた。
「……ふうん。年内に到着するとは思わなかった」
「そうだね」
『列車』は鉄道の形をしていることからそう呼ばれる。ロケットだった時は火星へ行くまで片道二年の長旅だった。そのため閉鎖空間で異文化間のトラブルが起きやすく、それぞれ国ごとで違うロケットを飛ばすようになった。いつの間にかワープが開発されて格段に便利になった今では、一瞬でたどり着けるわけではないけれど、ずいぶん短縮された期間で行けるようになったのだ。
「救助隊の連絡網で拾ってきた情報」
吐きだされた煙は畳の部屋の真上に広がり、特に上昇もせず、ふっと消えた。
「わたしが社会活動してるのは、こういうためだよ」
おばあちゃんはゆっくりとわたしに向き直った。くっと口の端を上げ、いつもの強気で皮肉屋な顔を見せた。
「それでこそ私の孫だ」
**
最初のコメントを投稿しよう!