きらめく星に眠る

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 憎らしい四十度の空。冬の気配なんかどこかへ消えた、異様なほどの空気の乾燥。  でも、綺麗だなと思った。  子どもが乱暴に青の絵の具をぶちまけたみたいな、強烈な青空だった。わたしたちが見上げる先には何もない。未来も過去も、形を成さない。誰と仲良くて、誰と喧嘩したのかさえ、わたしは何ひとつ覚えていなかった。友だちは入れ替わって、また新しい人と知り合って、別れたりした。みんなどこかへ行こうと夢を見て、実際にどこかへ行った人もいれば、どこへも行けなかった人もいた。それがわたしたち地球人だ。遠野ひかりと遠野早苗。二十一歳の公務員と九十歳の老人。  上を向くと、真っ青な空だけがある。ぎらつく太陽のきらめきがわたしをあぶりだそうとしている。ずっと歩いて、果てしなく歩き続けて、それなのに自分がこの世に生まれてから二十一年しか経ってない。あとどこまで歩くというのだろう。なぜ一歩ずつ踏み出す足が、こんなにも重いのだろう。そんな心の状態で、なぜわたしは、頭上できらめく日射しと抜けるように広い空を、綺麗だと感じているのか。こんな、「自然が美しいだけ」のどうしようもない事実を、感傷的に受け止めているのか。自分がバカらしくて、でも隣におばあちゃんがいて、笑いたいのか泣きたいのかも判断できず、どうにかなりそうだった。 「あんたらも東京行き?」  後ろから声をかけられた。
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