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七緒は大手企業、回路設計エンジニアの会社で営業部に勤めている。国内シェアは常にトップだ。しかしながら社員は必ずしも有能であるというわけではない。
残念なことに、今年で入社二年目になる七緒はお人好しでドジで間抜け。先輩からは未だに怒られてばかりの日常を送っている。そんな七緒が社長に呼び出されたことこそすべての始まりである。
この会社を経営している社長、三谷 倭は若干27歳にして社長を務めている遣り手の経営者だ。冷静沈着で頭も良い。その上、眉目秀麗。決まった相手もおらず、独身だから社外でも社内でも女子たちのからの人気度はかなり高い。そんなできた社長とダメダメ社員七緒の接点なんてもちろん皆無。――だった筈なのだが、事件は起こった。
なんと出会い頭に三谷と衝突し、あろうことか彼の書物をぶちまけてしまったのだ。そして廊下に転がった一冊の『育児書』。それを見たのがマズかった。
果たして独り身の彼が育児書を手にしているのはどういうわけなのか。疑問が疑問を呼ぶ中、明くる日の今日、社長の三谷から呼び出され、隠し子がいることを打ち明けられた。そして、クビにされたくなければ子守りをするよう、有無を言わさず命じてきたのだ。
自分の社会的地位を利用したそれはパワーハラスメントとも言える自分勝手で高慢な態度だ。訴えることも可能なのだが――。
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