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――そう。その人は僕と同性。
もちろんこれまで同性に恋心を抱いた事なんて一切ない。だからこの感情を理解した時、驚きを隠せなかった。
実際、荘真さんを初めて見た時だって、何とも思わなかった。
――訂正。何も思わなかったわけじゃない。
僕の身長は一八〇センチ、体重六〇キロ。昔からもやしみたいに貧弱な体型がコンプレックスだ。
そんな僕の理想はまさに荘真さんだった。
彼は外資系の仕事をしているらしい。
僕よりも頭ひとつ分高い背に、襟足まで短く切りそろえられた黒髪。細くて鋭い目。すっと伸びた鼻の下にある薄い唇。端正な顔立ちをしていて、しかも肩幅だって広い。モデル並みの体型でとても格好良い。そんな彼は滅多に笑わなくて、薄い唇はいつもへの字に曲がっている。
『格好良いけれど、無愛想な人』
それが荘真さんに対する第一印象だった。
だけどもし――。
いつも無愛想な人が今まで見たことがないくらい、優しい微笑を見たら?
僕が大好きな子供たちにその笑みを向けたら?
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