第1話・恋愛びより。

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 ――。  ――――。 「お疲れ様でした……」  仕事をどうにか終えた僕は門をくぐる。同時に我慢していた涙がするりと零れ落ちた。  ――ああ、もう最悪だ。  男が泣くなんて。  しかもまだ、保育園の門にいるのにっ!!  みっともなくズビズビと鼻を鳴らす。  すると何だろう。(うつむ)けた僕の頭上から影が被さった。  何事かと思って涙ぐむ目をそのままに顔を上げると、そこには薄い唇をへの字にしている、いつも無愛想な荘真さんが立っていた。  泣き顔を見られた!! 「先生、どうかなさったんですか?」  荘真さんが大人げなく泣いている僕に話しかけてきた。僕は慌てて肘で涙を拭う。  だけどもう遅い。荘真さんには僕の汚い泣き顔を見られてしまった。  ――どんなに頑張っても彼には近づけない。  荘真さんと僕とでは住む世界が違いすぎる。  まざまざと思い知らされれば、また涙がひとりでに溢れてくる。  ああ、もう最悪だ。  荘真さんには絶対泣き虫だって思われた! 「体調が悪いんですか?」  僕を気遣う声音はまるでベルベットのようなぬくもりがある。
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