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――。
――――。
「お疲れ様でした……」
仕事をどうにか終えた僕は門をくぐる。同時に我慢していた涙がするりと零れ落ちた。
――ああ、もう最悪だ。
男が泣くなんて。
しかもまだ、保育園の門にいるのにっ!!
みっともなくズビズビと鼻を鳴らす。
すると何だろう。俯けた僕の頭上から影が被さった。
何事かと思って涙ぐむ目をそのままに顔を上げると、そこには薄い唇をへの字にしている、いつも無愛想な荘真さんが立っていた。
泣き顔を見られた!!
「先生、どうかなさったんですか?」
荘真さんが大人げなく泣いている僕に話しかけてきた。僕は慌てて肘で涙を拭う。
だけどもう遅い。荘真さんには僕の汚い泣き顔を見られてしまった。
――どんなに頑張っても彼には近づけない。
荘真さんと僕とでは住む世界が違いすぎる。
まざまざと思い知らされれば、また涙がひとりでに溢れてくる。
ああ、もう最悪だ。
荘真さんには絶対泣き虫だって思われた!
「体調が悪いんですか?」
僕を気遣う声音はまるでベルベットのようなぬくもりがある。
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