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どうしてそんなに優しい声で話すの?
それに荘真さんの目。
普段は少し焦茶っぽい瞳の色がアーモンド色に変化している。顔を上げれば夕陽にも負けないくらいあたたかな視線と重なった。
荘真さんはどうしてそんな目で僕を見るの?
たかだか保育士の僕なんかに優しい言葉をかけてくれるの?
あまりにも優しいから、だから、『もしかして』なんて期待してしまう。
――違う。そんなんじゃない。
期待しちゃダメだ。
恋心を抱く僕の思考が勝手に暴走する。
そんなわけない。
荘真さんには彼女さんがいる。しかも同性。両想いなんて有り得ないんだ……。
「……ひまりちゃんのお忘れものでもありましたか?」
訊ねられた問いに、『貴方に失恋したから』なんて答えられる筈もない僕は荘真さんにここへ戻って来た理由を訊き返した。
果たしてひまりちゃんの忘れ物なんて園内にあっただろうか。
思い返してみても、荘真さんへの失恋の痛みで何も覚えていない。
「園内、見てきますね!!」
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