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ひまりちゃんの忘れ物を理由に、荘真さんから逃げたい一心で背を向ける。
だけど僕が逃げるよりも先に腕が伸びてきたんだ。
「忘れ物はありません」
荘真さんに肩を掴まれた。
おかげで僕はまた荘真さんと向き合わなければいけないわけで――。
でも、どうして?
荘真さんは整った眉尻を下げ、どこか困ったような表情を見せている。
そして――。
「好意を抱いている人が泣いているのに、放っておけるわけがない」
「えっ!?」
――荘真さん?
今、なんて言った?
『姉』、『好意』いろんな気になる単語が彼の口から一度に出てきて頭の中はパニック状態だ。
何から訊ねれば良いのかがわからなくなった。
何も言えず、そのまま穴があくほど荘真さんを見つめていると――。
「君のことが気になって仕方がないんだ」
荘真さんは夕焼けと同じくらい赤い顔をしていた。
えっと、つまり……?
僕が彼女さんだと思っていた女性って荘真さんのお姉さんだったわけで?
荘真さんは僕を気にしてくれている?
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