青すぎた春、君と最後のデートをした。

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*  それから四年後、俺に「仕事」という名の恋人ができた。馬鹿だなと頭の中でつっこんだ。  今朝葉月から手紙が届いていた。結婚式の招待状だった。インスタで結婚したのは知っていたし、あの時「ハル」と呼んでいた夫の顔も認知していた。招待状の端っこには手書きで、「親友へ」と書かれていた。  日付と手帳を照らし合わせると出張の予定が入っていて、何故か安堵して「欠席」に丸をつけた。  あれから誰とも付き合っていない。まだ葉月に執着している自分が相当重いのはもはや開き直っていた。本当は結婚式場のドア、もしくはあの日の電車の扉を蹴破って葉月を攫ってしまいたい。そんな度胸がないことくらい、自分でわかっているけれど。  欠席の文字の下に、「結婚おめでとう、お幸せに」と書き足した。  今はこの気持ちが半分本当で、半分嘘くらいだろうか。  いや、百パーセント嘘だったけれど、戻らない時間から目を背けるために今は自分の気持ちに嘘をつくしかなかった。
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