1.ずぶぬれ毛玉にひまわりの傘

11/22
前へ
/97ページ
次へ
 昨晩はいつ眠りに落ちたのか、自分でもわかっていない。  とりあえず疲れていた影響で馬鹿みたいに爆睡した。起きたのは翌日の10時だった。すっきりとした快眠。しかし寝覚めは最悪だった。 「は…? えっ? はああ……!?」  目覚めた宮古がすぐ気づいたのは、荒らされた部屋だ。  物は多いけどそこまでとっ散らかっていなかったはずの部屋の小物が、一目で異常だとわかるほど床に散乱していた。サー…と肝が冷えていく。 (そういえば昨日、玄関の鍵、閉めたっけ)  だが、エントランスを抜けるにはオートロックが必要だ。  まさか、マンションの住人が。考えたくないが職業柄、ストーカーの可能性も、0では。  ハッとして全身を見る。身体に危害は加えられてない。不法侵入者の、狙いは。荒れた部屋。……泥棒! 「あ、れ……? あいつは?」  そういえば、腕に抱いていた生き物が忽然と消えている。  オスかメスかわからなかったので、とにかく「ポチ」だの「コロ」だの「ジョン」だの手あたり次第に名前を呼んで、部屋のなかを探しまくったが、何の痕跡も見つからなかった。ちなみに、玄関の鍵は開いたままだった。  一通り部屋を確認した結果、大きめのパーカーとサルエルパンツとサンダル、それからサイフの諭吉がひとりほど消えていた。念のために通帳を確認してみたところ、幸いにも貯金は無事だった。でも一応新しく口座を作ってそちらに移しておいた。  
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

764人が本棚に入れています
本棚に追加