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『宮古くんって、もっとやさしいコだと思ってた』
ドラマのオーディションは惨敗。
その気はなかったのにSNSでうっかりエゴサまがいのことをしてしまい、目にしてしまった好意的ではない呟き。
ずるずる引きずり、調子があがらないレコーディング。
極め付けに、ダンスでトチってメンバーと衝突。大きな怪我がなかったからよかったものの、モチベーションを底辺にまで下降させるには十分だった。
後から思えば、そのタイミングを狙われていたのではないかと邪推してしまう。
「今のお前危なっかしいから、気ィつけて帰れ」。ぶつかったのはこちらなのに逆に心配までしてくれる優しい仲間にも生返事しかできず、早めに帰ろうと通った近道。
そこでばったり遭遇した、追いかけられる女性と複数の男性。一本となりの通りには、ホテル街。
自分の立場はわかっていても。
宮古の性格上、無視、できるわけがなかった。
ただ、名誉のために弁明すると、女性には手は出してない。
どころか、二人きりにすらなってない。
しばらくホテルのエントランスで粘って、マネージャーにタクシーを呼んでもらって、もちろん別々に帰った。
ただ、彼女があんまり怯えるので、求められるまま宮古は連絡先だけを交換した。QRコードで送られたIDを自身の携帯に登録した彼女が、心底安心したように携帯を抱きしめる。
そのいとけない仕草に、庇護欲が生まれたのは事実だった。
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