1.ずぶぬれ毛玉にひまわりの傘

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  (もっと優しいコって……つまり、都合のイイ男って意味なのでは?)  しとしとと雨粒が頬を叩く、7月初旬。  梅雨真っ盛り。なのに、傘を持ってこなかった。大丈夫だろうとたかをくくって。泊まっていけと引き止める友人の厚意を無碍にした、バチだろうか。  酔いはとっくにさめていた。  よくも騙したな、と彼女を脳内で詰る気力もない。まあそれに関しては、自分より友人の方がよほど腹に据えかねた様子だったので、かえってクールダウンできたのが大きい。  ショックを受けているのかどうなのか、今の自身の心身状態は、自分でもよくわからない。ゆくゆくは恋に昇華するはずだった友情以上恋愛未満の感情を、飲み下すべきか吐き出すべきかわからず、舌の上で転がしている。  ただ、少し疲れていた。  なんとかなるだろう、場の流れに身を任せていよう、そんな具体性のない匙加減が、最近やたらと悪循環をもたらしている自覚はあった。だからオーディションに落ちるし、だからレコーディングも上手く音が乗らない。だから騙されかけるし、だからこうして雨に濡れている。  あめあめ、触れ触れ、母ちゃんが。  結局は、吐き出す方を選んだ。音として。友情も恋愛未満もクソもない、ただただ降り注ぐ雨粒を顔に受けて、掠れた声に音符を乗せた。ストレス発散としてカラオケに行く感覚に近い。つまりはヤケクソってやつである。  雨足はだんだん強くなり、少しの距離を歩いただけでけっこう冷えた。友人宅を出る前にタクシーを呼んでいれば、といってももう後のまつり。  蛇の目でお迎え、うれしいな。  なんだか色々どうでもよくなって、雨夜の路地に歌声が響く。といってもこんな大雨の中では、別に誰にも聴こえやしない。誰にも届きやしない。そんな捨て鉢の思いで。  やはり多少は酔っていたのかもしれない。3%のアルコールと、立て続けに重なった不運と、雨にうたれるこの状況に。  
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