あいはかれぬ

１．ずぶぬれ毛玉にひまわりの傘

　芸能界入りはなんと１歳。両親はともに大物俳優同士。
　キッズモデルから始まり、美少年期は天才子役としてお茶の間の覚えもめでたく、成長と共にさらに磨き抜かれた美しさとパリコレもかくやのスタイルで幅広い女性層や時として男性から支持され、２７にして頭に「実力派」「ベテラン」をつけられる、まさに天賦の才を持って生まれた有名俳優。
　小作りの顔に白い肌、長い手足と高い身長、決して薄くないボディライン。
　今でこそ俳優のイメージが強いけど、もともとモデル出身とあり、その完璧すぎるプロポーションが世に出されたら最後、店頭から雑誌が消え、重版決定の最多記録と最速記録を未だに保持し続ける。

　ルックス・スタイルもさることながら、渡八千代が「神の手がけた芸術品」と謳われる何よりの理由は、″光の加減によって金にも銀にも輝くプラチナブロンドと、神秘性に富んだ紫水晶のひとみ”（雑誌より抜粋）。
　男性ながら宝石のCMに起用されたときなんて、渡八千代の瞳がキレイすぎて「VS顔面国宝」「出来レース」「渡八千代とカラット比較される宝石たちのお通夜」などとSNSを沸かせ、ネットニュースになったくらいだ。
　そう、この。このひとみ。

「なんか似てんなあ……」
　"　クぅーーん？　"

　すっとぼけた顔をしているが、このポメラニアン、画面の向こうで動く渡八千代と見比べれば見比べるほど、色彩がよく似ている。
　渡八千代はあの見目で一応純日本人らしく、それでもあそこまで純度の高い紫色の眼なんて世界中探してもそうそういないと思うが、これが犬となると果たして。
　黒や茶色とかはよく見るし、あとハスキーなんかは青い眼だったりするが、紫だ。見れば見るほど作り物のようだ。
　犬でもメラニン色素とか関係あったりするだろうか。ポメラニアン色素的な。