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煉獄編 1
私はムチ打ち刑が嫌いではない。というよりも気に入っていて、自らすすん
で受けているし、もっと言えば子供の頃からの夢だった。小学校五年生のと
き、テレビで初めて公開処刑を放映しているのを見てから、自分もああなりた
いと思ったのだ。
相方には、同級生の土井を選んだ。笑いのセンスが合うと感じたのだ。もと
もと私はクラスのムードメーカーで、授業中でも休み時間でも何かを言って皆
を笑わせていたが、あいつだけは私自身がイマイチだなと思ったネタにはけし
て笑わず、手応えのある時だけ笑っていたからだ。
土井も私と同じ想いらしかった。掃除当番で一緒になった時に声をかける
と、二つ返事で引き受けてくれた。コンビ名は私たちの好物にした。ネタは私
が作って、鮭とばをしゃぶりながら稽古に励み、一年後にクラスで初披露し
た。
自分で言うのもなんだが、大ウケだった。担任もたいそう感心して、体育館
で全校生徒を前にした舞台を踏むことになるまでにそう時間はかからなかった
し、その規模がとんとん拍子に大きくなり、漫才コンテストに優勝して全国区
にまでなる頃には、私たちの高校生活は終わりを迎えていた。
進学は迷うことはなかった。お笑い芸人養成課がある専門学校に入り、既に
現れていた頭角によって同期生をぐいぐいおしのけ、卒業と同時にデビュー。
演芸新人賞も獲り、華々しい生活が約束されたと思った辺りで、限界が訪れ
た。
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