遺された手紙

1/1
前へ
/23ページ
次へ

遺された手紙

 貴方は今、どこで何をしてますか。    私のことを探してくれているでしょうか。    いえ、まだ探すこともできないですよね。      貴方と見たあの景色が恋しいです。  小鳥の囀りと、それに呼応するかのように波打つ湖。  青々と茂る木々を優しく撫でる夏の風。  そして、それらを額縁(がくぶち)に納めるかのごとく包む青空。  目を瞑ればいつだって鮮明に思い出せます。  私は相変わらずこの息の詰まるような監獄にいます。  私を助けて下さい。  貴方が私の下に来てくれるその日をいつまでも待っています。  困難なことだと言うことは分かっています。  でも、この生活が私には耐えられないんです。  毎日、殺意にさらされる日々、  物音一つに身を震わせ続けています。  貴方が私を向かえに来るその日が、来るというなら。  多くは望まない、ただ、貴方と一緒にいたい。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加