23人が本棚に入れています
本棚に追加
眩しい。
落とされた陽光が、葉に乗っている水滴によって乱反射し、一帯を光の渦にしたてあげる。
踝ほどの高さの草が生い茂る草原に立っている自分。
その横を夏風が楽しそうに走り去っていく。
「もうちょっとこっちに来てー」
振り返ると湖の近くに女の人が自分を待っていた。
なぜだろう。嬉しいはずなのに苦笑いしかできない。
「今行くよ!」
向かい風だった夏風と、今度は同じ方向に歩き出す。
手を振る彼女が堪らなく愛おしい。
でも、どこか悲しい気持ちになる。
彼女が何か言ってる。
俺の名前か?
ああ、もっと大きい声で言ってくれよ。聞こえないだろう。
いや、聞こえるはずなんてない。
最初のコメントを投稿しよう!