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「ここだよ」
そう言ってキツツキが二人を案内したのは、男が住む街から遠く離れた山の麓にある、大きな建物の前でした。男が大きな扉を開くと、中には森が広がっていました。しかもよく見ると、その生い茂った木の一本一本全てが本棚になっており、中には沢山の本がぎっしり詰め込まれていました。
キツツキが案内したのは、森の図書館でした。
初めて見る光景に呆気にとられる二人をよそに、キツツキは、「じゃあ、オレはここで」と言い残し、猛スピードで図書館の奥へと飛んで行ってしまいました。
「何だったんだアイツ?」
「わかんないけど、いいひとだったね」
キツツキに取り残された二人は、戸惑いつつも森の中へ入っていきます。
しかし、どこもかしこも同じような木の本棚では、どこへ行ったら良いかも分かりません。二人はすぐに道に迷ってしまいました。
「すみません!誰かいますか?」男がそう叫ぶと、どこからか小さな声が聞こえました。声のする方に目をやると、そこには神経質そうな顔で二人を見下ろす、ひとひらの葉っぱがいました。
「うちのウソが家出してしまったんです。どこにいるか知りませんか?」男は尋ねます。
「ウソさんでしたら先程いらっしゃいました」
「本当に⁉どこにいるんですか?」ホントが前のめりに尋ねます。
「自分は森の奥へ走って行かれるお姿は拝見しましたが、居場所は存じ上げません」
葉っぱは二人の質問に淡々と答えます。初めて会った葉っぱに興味をもったホントが、更に質問をしてもやはり、淡々と言葉少なく答えるだけで、すぐに黙ってしまいます。
葉っぱは、言葉の意味をその通りに伝えることが役割なのです。男はそんな葉っぱの姿に、自分を重ね合わせ少しだけ淋しさを感じました。
「自分からお教えできることはもうありませんが、フクロウ司書さんでしたら何かご存じかも知れません」そう言って、葉っぱは二人にフクロウの司書がいる場所への道順を教えてくれました。
二人が葉っぱに言われた通りに森の奥へ進んでいくと、開けた広場のような場所に辿り着きました。どうやらフクロウ司書が居る場所のようですが、辺りはシンとしていて誰も居ません。
「誰もいないじゃないか、あの葉っぱ、俺達に嘘ついたんじゃないか?やっぱり、図書館なんて作りものしかないところにいる奴の話なんて……痛って!」
ブツブツと文句を言っていた男の頭に何かが降ってきました。
「何だよ?本か!」
「ゴメンゴメン!やっぱり積み過ぎたか!」
そう豪快に笑いながら、本棚の高いところから降りてきたのは、一羽の若いフクロウでした。
男の頭に落ちてきたのは、フクロウが山積みにして運んでいた本の中の一冊だったようです。フクロウは拾ってくれてありがとうと言いながら、男から本を受け取り、楽しそうに二人を眺めて「君たちがウソが言っていた二人だね」と言いました。
どうやらフクロウはウソを知っている様です。
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