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「うちのウソが家出してしまったんです。どこにいるか知りませんか?」  男がフクロウに尋ねると、フクロウは先程とは打って変わって「知らないなあ」と答えました。男はさっきは知ってると言ったのは嘘だったのか、それとも葉っぱが自分たちを騙したのかと怒り出しました。そんな男の様子をじっと見て、どこか楽しげな様子のフクロウは堪えきれずに、ププッと吹き出しました。 「ハハハ、冗談だよ、冗談、アハハハハハ!」 「ちっとも面白くなんかない!俺に冗談を言うな!」 「本当にウソをしってるの?」 怒り続ける男をよそに、ホントは冷静に尋ねます。 「本当に知ってるよ~、知ってるも何も、わたしたち友達だし~」 フクロウとウソはとても気が合ったらしく、出会ってすぐに友達になったようです。ホントはフクロウを初めて見たときから感じていた、昔から知っていたかのような感覚の正体が、ウソに似ていたことだとわかり、とても納得しました。 「あんた達の関係は何でもいいですから、さっさと場所教えて下さい。こんなところ早く出たいんだ」 「それよりこの話知ってる?」 「無視か!」 フクロウはイライラしている男を軽くあしらい、先程男の頭に落ちた本を読み始めました。  本を読むフクロウの声は、今までの弾むような声とは打って変わって、とても落ち着いていました。フクロウの声が積み重なり積み重なり、どんどんと物語の世界が目の前に作られていきます。 「……おしまい。どう?この話面白かった?」 「別に面白くありません、それよりも早く……」  いつの間にか聞き入っていた男は慌てて答えます。 「そうかあ……あ!じゃあ、この話は?」 フクロウは再び男の話を遮り、積み上がった山の一番上の本をヒョイと取り、読み始めました。再び作られていく物語の世界。男はイライラしながらもフクロウの話に耳を傾けます。 「……フフッ、あっ」  それはとっても小さな音でしたが、フクロウとホントの耳にはハッキリと聞こえました。嬉しそうなフクロウとホント。 「今、ちょっと笑ったでしょ」  フクロウに言われた男は、バツが悪そうに「わ、笑ってない!第一、俺は作りものは嫌いだ!どうせ全部嘘じゃないか!ほら、いい加減アイツの居場所教えて下さいよ!」と怒りました。 「まって!ぼく、もっとお話ききたい!」 少し寂しそうな顔をして本を閉じようとしたフクロウを、ホントの声が遮りました。 「本当か!じゃあ、続き話すよ!」  フクロウは嬉しそうに続きを話し始めました。ホントは口をギュッと噤んで物語に聞き入ります。その姿は、一言も聞き逃すまいとしているようでした。男はそんなホントの姿に呆れつつ、少し離れたところにドカッと腰を下ろしました。顔はふてくされていましたが、耳はしっかりと物語を捕まえようとしています。フクロウはそんな男の姿を見て少し笑うのでした。 「……作りものって面白かったんだな」  高く積まれていた山が半分、またその半分、そのまた半分の高さになった頃、いつの間にかホントの真横まで移動し、フクロウの話を聴いていた男が、心地良い気怠さを含んだ声でそっと呟きました。 「そうだよ、アンタが思ってるよりずっと」  フクロウはそう言って、優しく本を閉じました。そして、二人にウソは図書館の一番奥にいること、そこにはおじいさんの大木がいることを教えてくれました。 「これでウソも大丈夫だな」  森の奥へガシガシと進んでいく二人の後ろ姿を見て、フクロウはホッと胸をなで下ろし、また本を積み直し始めました。
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