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大団円は目前だ。
そうだろ、名探偵。
大叔母、コック、第二婦人。
共通点の見当たらぬ、接点のないこの三人。
ただし依頼者のご令嬢に、たかる・言い寄る・嫌がらせ。
三つの殺害方法に、必要なのは男の腕力。
妙に合わない時間が増えた、クールな執事が怪しいな。
幼いころから決められた、親愛の厚い主従の二人。
ご令嬢への行き過ぎた愛が刃に宿るのか。
ただし私の第六感が、警鐘をずっと鳴らしてる。
お転婆のくせにかすり傷一つでうるさいこの助手が
嵐からずっとしおらしい。
遠出したような靴の泥。いつもは着ない黒い服。
泣くお嬢さんに感情移入しボロボロ泣いてたシャツの袖
こすれてついて見えるのは屋根とよく似た青銅色。
嗚呼、吹き抜けの大広間、ついに全員揃ってしまった。
「おいおいなんだァ?」
「犯人が分かったっていうの?」
わかってる、わかってる、わかってる…。
「先生!」
いつも事件を持ち込んでくる、うるさい声で呼んでくる。
彼女には変な七五調で話す癖があって、少し私にも移ってしまった。
──あれはいつのことだったかな。
確か二年と少し前、大雨の日に押しかけてきて、助手を申し出てきた。
当然すぐに断って、家に帰れと一喝すると、
「どうしても復讐したい奴がいるんです…」
びしょ濡れのまま静かに泣いた、あの日の夜が蘇る…──
「先生、時間です。」
震える手が私の袖をつかんだ。
そして私にしかわからない、わずかに震えた声で…。
「さあいつものように、その指先で、犯人を指し示してくださいよ。」
そんなこといつも言わないじゃないか。
「ねえ、先生?」
そうだ私はいつだって、最善を尽くすつもりだよ。
そして私は手を振り上げ…
「犯人は…あなただ。」
正面の執事を指さした。
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