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プロローグ:アフリカ某所、化石採掘場
土中からわずかに顔を覗かせたその頭骨を見つけた時、男は、これだと直感的に悟った。
これこそが、自分が長年にわたり追い求めてきた化石だ。
慎重に化石を掘り出し、刷毛で丁寧に乾いた土を落とす。そしてそれを、持参した三つのレプリカと並べて見比べた。
やはりそうだ。間違いない。私の仮説は正しかったのだ。これを見れば、〝輪読会〟の石頭どもも納得せざるを得ないだろう。
もっとも、残念なことに今の輪読会は、最近になって不自然なほど頻発している自然災害や疫病への対応でそれどころではないかもしれないが。
それにしても、この化石がよりにもよって、かつて〝アフリカのモノリス〟が発見されたというこの地で見つかるとは。この化石こそが、そのモノリスの無謬性を否定するものであることを考えると、運命の皮肉を感じずにはいられない。
しかし――。
自分の仮説が証明されたことを喜ぶ一方で、男の内には釈然としない気持ちもあった。
数学、物理、化学、生物学、地学、天文――自然科学に属するあらゆる分野において、モノリスが有する情報は真実であった。それなのに、なぜここにだけ現実との差異があるのだ?
この時、彼はまだ気づいていなかった。
この差異が、どれほど重要な意味を持つのかを。
そして、この発見が巡り巡って、はるか極東の人工島で何を引き起こすのかを。
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