第三幕:特定危険古生物・コードネーム〝チャレンジャー〟

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「対象生物が十階南側窓から屋外に出る可能性があります! 注意と狙撃準備を!」  危険古生物対策課の男から無線で指示が飛んできたのを受け、ビルの南側に配置されたチームは一斉に銃口を十階窓へと向けた。  それを見る警備部門の現場指揮官は、逡巡していた。  果たしてこの距離で当たるのか。もっと建物に接近するよう指示を出すべきではないだろうか。  高速で接近して攻撃してくる対象生物の特徴を考慮して、ビルを囲む部下達は、ビルがぎりぎり有効射程圏内となる位置に配置している。  だが、ぎりぎりとはいえ有効射程圏内なのは、対象生物が一階の窓または出入り口から出てきた場合の話だ。十階の窓では高さのある分、更に距離が開いてしまう。やはりここは多少の危険は冒してでも、もっと接近するべきだ。  しかし彼がその決断を下すよりも、対象生物が窓から飛び出してくる方が先だった。その生物は、軽やかな身のこなしでビルの壁面に沿って伸びる雨樋のパイプに飛び移ると、するするとそれを登り始める。ヒョウ型と呼ばれるタイプだと聞いていたが、まるで猿のような動きだ。  ビルを取り囲む部下達が一斉に発砲するが、当たらない。やはりこの距離と高低差では無理があったのだ。 「もっと近づいて撃つんだ!」  彼がそう命じた時には、その生物の姿は既に屋上へと消えていた。
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