人が死ぬことはもうないだろう(L版)

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人が死ぬことはもうないだろう。 何故ならば、人は皆死んだからだ。 天の川銀河の片隅で人類はひっそりと滅亡した。 だが、人類を再生しようとする計画が天の川銀河の片隅で始動していた。 ケンタウルス座アルファ星Aを主星とする、惑星C1(アルファ星Ab)にいる知的生命体である。 高度な文明を持った彼らの惑星は人類には発音できない名前を持っているのでC1と呼んでおく。 C1星人たちは人類が死滅した地球にやってきて調査を進めた。その過程で、地球人類を再生する可能性を見つけたのだった。 冷凍された精子と卵子である。これらはあちこちにある医療機関・研究機関跡に点在していたが、それらの一部には、仮死状態にあり生命体としての人間を生み出すことが可能なものがかなり残っていた。 彼らは生理医学的な調査と量子コンピュータによるハイパーAIを駆使して、精子と卵子との組み合わせから、ヒトの男女を仮想空間上に作り出した。 そして個体としてのヒトのシミュレーション調査を終えると、実際にヒトを作成する実験を行なった。夥しいデータが出され、解析が行われた。 それらの結果を元に、種としてのヒトの人口が数10億人に増えるまでをシミュレートした。 長い検討期間が置かれた。 決定に至る最終会議は長引いたが、地球人類を種として再生させることになった。膨大な実験をやってみる価値は十分あるということだ。 彼らはC1の衛星を人類が住めるように改造して、人類の養殖を始めた。 そして人類自身に文明を作らせた。養殖人類によるリアルシミュレーションである。 ヒトから始めているので、数千年程度で宇宙に飛び立つだけの文明が築かれた。 さらに数百年が経った頃、第2世代の人類は忽然といなくなった。 そして惑星C1に突然現れた。C1惑星を乗っ取ろうとしたのだ。 この結果は、C1星人たちの量子コンピュータシミュレーションによる予想の1つにあったので、対応準備はできており、第2世代の元地球人類は全員が抹殺された。 やはり駄目だったか。C1の皇帝はぽつりと呟いた。 しかし莫大なデータが得られた。C1星人の文明が滅びずに未来永劫に渡って発展する方法を見い出すに足る、貴重なデータだ。 こうして地球人類は再度滅亡することによって、宇宙の名も知れぬ知的生命体の存続に対し、大きな貢献を果たしたのだった。
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