優しさと嘘①

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優しさと嘘①

 今日は、強豪校と練習試合。まだ夕方だけど、起きてから12時間以上経っている。大好きなバスケだけどもうクタクタだ。幸い、帰りの電車は空いていた。座った途端、睡魔が襲ってきた。  目を覚ますと、妊婦さんが目の前に立っていた。眠っている間に混んだようだ。 「ここ座ってください!」と急いで席を譲る。 「えっ。あ、でも……」  僕がいきなり声をかけたせいで、妊婦さんは困ったような顔をしている。 「どうぞ。僕、次の駅で降りるので!」  妊婦さんは「ありがとう」と言って席に座った。  駅に着いた。僕は会釈をしてから、電車を降りる。  そして、もう一度電車に乗った。同じ電車の隣の車両。さっき嘘をついてしまったけど、きっと許してくれると思う。
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