29人が本棚に入れています
本棚に追加
宿泊研修
さっきまでの家が多かった景色から一気に山々が広がる。
バスの車内は何人かでマイクを借りて歌ったり、おしゃべりしたりなど、にぎわっていた。
今日は仙泉小学校の小6宿泊学習、今は日光東照宮から近くのホテルまでのバスで移動中。
その中、白石レイカは静かに山が広がる景色を見ていた。
「ねぇ、今からトランプをやるんだけどレイカもやらない?」
ふと、後ろから声がかかる。
振り返ると、高畑ミツキがこっちを向きながら微笑んでいた。
彼女は高畑ミツキ、私の数少ない友達だ。
私はクラスのはじっこで本を読んでいるおとなしいタイプだが、対照的で明るくてみんなから好かれている。
私はそんなミツキを心から信用している。
「誰とやるの?」
「えーっと、カイキとレオンとマイとアリサだよ」
「カイキがトランプやるの……?」
「うん、そうらしい」
ミツキはコクコクとうなずく。
私は目を大きく見開いた。
えっ? なんでこんなに驚いているかって。
それはね、水谷カイキはこの学校一の天才なんだよ。
専門の学者しか読まない本やどんな誰にでも読めなさそうな文字もカイキなら読めてしまう。
専門知識にとどまらず、どこでも使わなさそうな雑学まで知っている。
カイキがトランプなんてやってしまったら毎回カイキが一位通過しちゃうよ。
「……わかった、やろう」
私は静かに言うと、ミツキは手招きをする。
私はミツキと一緒に一つ後ろの席に移動した。
そこにはカイキとレオンが、アリサとマイがそれぞれペアで座席に座っている。
「レイカもトランプやるのか?」
レオンがニカッとレイカに向けて笑顔を作る。
黒木レオンはカイキの親友でサッカーが得意だ。
そのうまさはとてつもなく、サッカーの強豪校からはすでにスポーツ推薦で入学するのとが決まっている。
しかし、スポーツ以外に関してはすごく鈍感だ。
「別にいいでしょう? トランプは人数が多い方が楽しいわよ」
アリサは上品に微笑む。
姫海堂アリサは学校のお嬢様、両親は会社を作って大成功をしている。
アリサの家は一度行ったら自分の家とつい比べてしまうという噂だ。
私はアリサの家に行ったことがないからわからないけど。
「やるんだったらやろう。できる時間が無くなっちゃう……」
マイはみんなにギリギリ聞こえるぐらいの小さな声で言う。
マイは私と同じく静かなタイプだが、アリサとたまたま席が隣だったから誘われたらしい。
マイはお母さんが占い師でよくテレビに出ている。
クラスで話題になることのよくあるが、本人は占いには興味がないからクラスメイトに注目を浴びないようにできるだけ隠れるように過ごしている。
「うん、やろうっか。カード配るね」
私はそういうとリズムよく、カードを切って配り始める。
「「「「「「じゃ―んけーんぽん!!!」」」」」」
六人はタイミングを合わせてじゃんけんをする。
独り勝ちをしたアリサがマイのカードをひく。
そうしてゲームは始まったのであった。
最初のコメントを投稿しよう!