不思議な出来事の始まり

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不思議な出来事の始まり

 バスから下車(げしゃ)し、()(まえ)宿(やど)()る。  ずいぶん豪華(ごうか)だな。  快晴(かいせい)青空(あおぞら)にワインレッドのホテルの屋根(やね)がよく()える。 「ここかホテルかぁ。きれいだね」  ミツキがホテルを見上(みあ)げながら()う。  みんながホテルの(なか)(はい)(はじ)める。  わたしは最後(さいご)のほうに(なら)んでホテルの(なか)(はい)る。  宿(やど)(なか)広々(ひろびろ)としていて居心地(いごこち)がよさそうだ。 「こんにちは」  (わたし)はドアの(まえ)にいた(わか)男性(だんせい)にあいさつをする。  最初(さいしょ)のときはいなかったよね……? 宿(やど)(ひと)かな。  (かお)()げた瞬間(しゅんかん)、さっと悪寒(おかん)がした。  さっきまでクラスメイト(はな)っていたにぎわいが()え、三十八人(さんじゅうはちにん)いたクラスメイトは九人(きゅうにん)()っている。  雲一(くもひと)つなかった青空(あおぞら)(あらし)天候(てんこう)(かわ)わっていた。 「えっ⁉みんなは?」  ミツキが(こえ)()げる。  よかった、ミツキはいる。  ほかの(ひと)は?  (わたし)はあたりをきょろきょろを()る。  そこにはさっきトランプをやったカイキ、レオン、アリサ、マイ。  そしてクラスメイトのホノカ、シノ、ユウヤとさっきあいさつした(わか)男性(だんせい)がいた。  ホノカは一見(いっけん)上品(じょうひん)そうに()えても中身(なかみ)結構元気系(けっこうげんきけい)自分(じぶん)のことはうち()びでクラスメイトのことを全員(ぜんいん)()()てで()んでいる。  そのギャップが(はげ)しいため一部(いちぶ)のクラスメイトの(なか)では(うら)のあだ()で『ギャップ女王(じょおう)』とささやかれている。  シノは人気(にんき)アイドルグループのメンバーの一人(ひとり)でこの学年(がくねん)だけでなく仙泉小学校中(せんいずみしょうがっこうじゅう)人気(にんき)のある(ひと)だ。  でも、小学校中(しょうがっこうじゅう)人気(にんき)になって(こま)っているためほかの学校(がっこう)には自分(じぶん)存在(そんざい)がばれないようにしている。  ユウヤはシノの友達(ともだち)漫画家(まんがか)だ。  (いま)まで様々(さまざま)なジャンルの漫画(まんが)完成(かんせい)させて(しょう)()している。  実際(じっさい)一回(いっかい)だけとある(しょう)金賞(きんしょう)受賞(じゅしょう)して漫画(まんが)書籍化(しょせきか)させたことがある、そのときは話題(わだい)になってクラスメイトのほとんどがその漫画(まんが)()っていた。  それで人気(にんき)急上昇(きゅうじょうしょう)したため、(いま)では漫画界(まんがかい)注目(ちゅうもく)させている。  全員(ぜんいん)十人(じゅうにん)か、ほかの(ひと)はどこ()ったんだ? 「みんな心配(しんぱい)させてごめんね、(ぼく)はこの宿(やど)宿主(やどぬし)一ノ瀬明(いちのせあきら)だ。さっきまで()れていたのに不思議(ふしぎ)だね。今日(きょう)はここに(とま)っていくといいよ。部屋(へや)準備(じゅんび)してあるからさ」  そういうと(あきら)はみんなの不安(ふあん)()ばすように(わら)いかける。  そうだな、今日(きょう)不必要(ふひつよう)(うご)きはしない(ほう)がいいかもしれない。  (あきら)さんの()(とお)り、今日(きょう)はお言葉(ことば)(あま)えて(とま)まらせてもらった(ほう)が……」  すると、ミツキがみんなに()かって手招(てま)きをしている。  (わたし)たちはすぐにミツキのもとに(あつ)まる。 「どうする? (あきら)さんは()っても大丈夫(だいじょうぶ)だって()っているけど」  ミツキは小声(こごえ)()う。 「(わたし)()っていいと(おも)うよ。どのみち(わたし)たちは今日(きょう)からここに(とま)予定(よてい)だったしね」  (わたし)自分(じぶん)(かんが)えを()う。 「(おれ)白石(しらいし)意見(いけん)賛成(さんせい)だ。もしも、ここから()たとしてもほかの(ひと)たちが()つかるとは(かぎ)らない。だったらお言葉(ことば)(あま)えた(ほう)がいいと(おも)う」  カイキもレイカに(つづ)いて自分の意見を言う。 「白石さんも水谷さんも賛成意見(さんせいいけん)のようですね、反対(はんたい)意見(いけん)(ひと)はいますか?」  アリサが上品(じょうひん)口調(くちょう)()う。  無言(むごん)(つづ)く、どうやら反対(はんたい)(ひと)はいなかったようだ。 「それでは決定(けってい)ですわね」  アリサがにっこりと笑顔(えがお)()かべると一ノ瀬(いちのせ)さんのほうへ()かう。 「すみません、宿泊(しゅくはく)(けん)ですがお(ねが)いしてもよろしいでしょか?」  アリサが一ノ瀬(いちのせ)さんに(はなし)しかける。 「もちろんだよ、部屋(へや)はもう用意(ようい)してあるから()きな部屋(へや)使(つか)っていいよ。荷物(にもつ)()いておいで」  一ノ瀬(いちのせ)さんはそういうと、さわやかな笑顔(えがお)()う。 「()こっか」  ユウヤがみんなを()れて部屋(へや)のほうへ()かう。  部屋(へや)全部(ぜんぶ)十室(じゅっしつ)あった。 「これどうする? 複数人(すくすうにん)一部屋(ひとへや)でも一人一部屋(ひとりひとへや)でもいいけど」  ホノカは(くび)をかしげる。 「一人一部屋(ひとりひとへや)でいいんじゃない? ()(まえ)一緒(いっしょ)にいられるわけだし」  レオンはすぐに自分(じぶん)意見(いけん)()う。 「うーん、マイは反対(はんたい)かな。ワイワイなりながら()たいからなぁ」  マイはレオンとは(ちが)って反対意見(はんたいいけん)のようだ。 「わかりやすいように一人一部屋(ひとりひとへや)でいいんじゃない?」  シノが(つづ)けて意見(いけん)()言う。 「ああもう、キリないな。多数決(たすうけつ)でいい?」  (わたし)はみんなの意見(いけん)()()う中、ひときわ(おお)きな(こえ)()す。  しーん……。  (きゅう)(しず)かになる。  えーっと、ダメだったかな? 「いいじゃん、うち仕切(しき)っていいー?」  ホノカがピシッと()()げる。 「いいよ」  マイがニッコリと笑顔(えがお)でいうと、ホノカはコクリとうなずいた。 「それじゃ、一人一部屋(ひとりひとへや)がいい(ひと)ー?」  ……五人(ごにん)一人一部屋(ひとりひとへや)()まりだな。  (わたし)(なに)()わずに一番近(いちばんちか)くにあった部屋(へや)をガチャッと()けた。 「わぁ!」  部屋(へや)和室(わしつ)一人(ひとり)十分(じゅうぶん)すぎるぐらいの(ひろ)さだ、部屋(へや)(かど)にはローテーブルがあった。  (わたし)はすぐに荷物(にもつ)()く。  なんでかは()らないけど時計(とけい)()かれてないな。  とりあえずほかの(ひと)部屋(へや)()こう。  (わたし)はすぐに(となり)のミツキの部屋(へや)()く。 「ここにも、時計(とけい)はないのか」  (わたし)(しず)かにつぶやく。 「時計(とけい)(さが)してるの?」  トンッ  (かた)()()かれる。  ()()かなくてもだれかわかる。  元気(げんき)なこの(こえ)はミツキだ。 「うん、どこにもないんだよね」  (わたし)はゆっくりと()()くとあごに()()きながら()った。 「白石(しらいし)高畑(たかはた)ここにいたのか」  カイキが二人(ふたり)()()る。 「どうしたの?」  (わたし)(くび)をかしげる。 「いや、部屋(へや)荷物(にもつ)()いてホテルの入口(いりぐち)にあった公衆電話(こうしゅうでんわ)学校(がっこう)連絡(れんらく)しようとしたんだ。そしたら電話(でんわ)がつながんなくて……」 「それって、電波(でんぱ)(とど)いてないっていうこと⁉」  ミツキは()(おお)きく見開(みひ)く。 「それじゃあ、時間(じかん)()からないよね。エントランスにあったっけ?」  レイカは階段(かいだん)(した)からエントランスを()つめる。 「(おれ)、ちょっと()てくる」  そういって階段(かいだん)(くだ)るカイキ。  数分後(すうふんご)。 「時計(とけい)あった、(いま)(よる)十一時(じゅういちじ)だってさ」  カイキが(かた)(いき)をしながら()う。 「(よる)⁉ みんなに()いに()かなきゃじゃん、多分気付(たぶんきづ)いてないよ」  (わたし)はすぐに()()す。  でも、(さわ)いでる様子(ようす)はなく意外(いがい)にもしんとしている。  あれ、みんな()きてると()ったんだけどな。  (わたし)一番近(いちばんちか)くにあった部屋(へや)のドアを(すこ)(あけ)けてみる。  電気(でんき)が……()えてる。  全部(ぜんぶ)十室(じゅっしつ)だから満室(まんしつ)のはず。  だからここは(だれ)かの荷物(にもつ)()かれているはず。  (いま)廊下(ろうか)にいるのはミツキとカイキと(わたし)三人(さんにん)だけ。  ほかの(ひと)部屋(へや)(はい)っている。  ……それなら(わたし)たちも()るか。 「みんな()てた、(わたし)たちも()よう」 「そっか、おやすみ。レイカ」  ミツキがにっこり笑顔(えがお)(つく)る。  カイキは無言(むごん)のまま自分(じぶん)部屋(へや)へと()かった。  (わたし)部屋(へや)(はい)るとすぐさま布団(ふとん)にダイブ。  羽毛布団(うもうぶとん)眠気(ねむけ)刺激(しげき)した。  うぅ……まだ初日(しょにち)なのに、(つか)れているからか(ねむ)いよぉ。  電話(でんわ)がつかないんだよな、(わたし)たち(もど)れるのかな?  (あらし)がやんだら電波(でんぱ)ももとに(もど)るはずだから学校(がっこう)に……連絡(れんらく)して……。  ダメだ、思考(しこう)が……。  (わたし)はしっかりと布団(ふとん)(もぐ)()む。  (つぎ)瞬間(しゅんかん)(わたし)(ふか)(ねむ)りについていたのであった。            
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