居場所はどこに

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居場所はどこに

「お~、やっと来たか。遅いぞ~」 指定された店に着いて、案内された個室には、すでに顔の赤い酔っ払いが一人。 会社を出る頃になって少しばたついてしまい、ここに来るまで思ったより時間がかかってしまった。 詫びの言葉と共に、先に飲んでいていいと哲也は確かに連絡していたけれど。 そうは言っても、予定の時間からまだ三十分も経っていない。 「悪かったな。それより涼太、できあがるの早くないか」 涼太の向かいに座りながら、ソフトドリンクを頼もうとメニューを見た。 その気配を察知したらしい酔っ払いは、声を上げた。 「おい、お前も飲めよ」 「明日も仕事なんだよ」 「俺だってそうだ、イチから全部やり直しだ。なのに、俺にだけ飲ませるつもりか」 (これはまた、荒れてんなぁ。自分で勝手に飲んでんだろ) 哲也はつい数時間前に、急に涼太から呼び出された身だ。 今日は週の真ん中で、会社勤めの哲也は明日もいつも通り仕事がある。 「・・・ビール一つください」 待っていた店員に伝えると、ついでに涼太もハイボールを追加して、店員がその場を離れた。 哲也は軽く息を吐いて、改めて涼太を見る。 「お前、いつから飲んでたんだよ」 「ん~?いつだったかなぁ」 考えるふりをしているのがバレバレだった。 強くはないけれど弱くもない涼太がここまでになっているということは、少なくとも一時間以上は経っている。 そして、涼太がこうなっている理由は大体見当がついた。 「仕事で何かあったのか?」 「なんでわかんの、俺まだ何も言ってない」 「涼太から急に呼び出されるときは、大抵仕事がらみの愚痴かなにかなんだよ」 さすが哲也、と涼太はへらっと笑った。 「新作のデザイン全ボツくらった。打ち合わせちゃんとやって、コンセプトとか要望とか、ちゃんと考慮した。なのにたった一言、なんかダサい、だってさ」 (あー、それで、イチから全部やり直しか) 涼太はもう中身がほとんど残っていないグラスを勢いよくあおった。 カラン、と氷が鳴る音で、スイッチが入ってしまったようだった。 「単純な俺の力不足なら仕方ないと思ったさ、悔しいけど。でも、フワフワした否定の言葉ばっか繰り返されて、最近注目され始めたから浮ついてるんじゃないかとか散々こき下ろされて。挙げ句の果てになんて言ったと思う?!」 店員が注文の品を運んできても、涼太の勢いは止まらなかった。
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