いるのか、いないのか

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 けれども返事はない。きっと突き飛ばしたことを怒っているのだろう。仕方がないな。1人にするわけにもいかない。ささくれた気分で扉の脇に座り込み、女が出てくるのを待った。  やがて空が少しだけ白み、遠くの山の稜線が闇から薄く切り取られていく。自然とあくびがでる。眠い。体はぐったりと疲れている。埒があかないな。こんな面倒な女だったかな。ふぅと溜息をつく。  実家には昨夜着くと言っていたのに帰らなければ心配するだろう。生憎、山で電波はつながらなかった。  ここの廃社は街道から一本入ったところで歩いても30分くらいだろう。女はこの近くの生まれで昨日の闇の中でもここにたどり着けたほどこの辺りには詳しい。ひょっとしたら俺がここにいると気まずくて出てこられないのかもしれない。 「本当に置いていくからな。後で連絡しろ」  最後に郵便受けから覗き込み、先ほどと同じように2本の足がまだ立っていることを確認して、少し気まずい思いを抱えながら車を回した。
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