嘘で救われる僕と、救われるという嘘 その1~2

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 気絶するほど頭を打ったのは初めてだし、まだ手足がしびれているというので病院へ行くことにした。  母親から携帯を借りて光が救急車を呼んだ。  そのまま成り行きで女の子に付き添いながら病院まで行った光が、駆け付けてきた父親に引き継いで帰宅したときには昼過ぎになっていた。  夕方になって美琴が帰ってくると、いつものように抱きしめられてキス責めにされながら、今日の出来事を話した。  「何だか…手が熱くなって…手を当てていると助けられそうな感じがしたんだ…いや、どう考えても変な話なんだけどさ、なんだかすごくしっくりくるというか…」  そう話したときの、笑顔が消えて見開かれた美琴の鋭い目つきに光は恐怖を感じた。  何だろう、言わない方がいいことだったのか?  美琴はすぐに表情を取り繕うと、いいことをしたねと言って平静を装った。  しばらくしてインターホンが鳴り、美琴が玄関を開けると、女の子を連れて男が立っていた。  「今日は弟さんに妻が介抱していただいて、娘の面倒も見ててもらったようで…」  ひとしきり礼を述べて菓子折りを置いていくと、親子は去って行った。
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