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他の家具はこのまま放棄してまた買い直せばいい。
引っ越し業者などを頼めば、足が付いてしまう。
教団で自分に匹敵する霊能者は数えるほどしかいない。
それでも、封印の弱った光が、昨日奇跡を行ったのなら、感じ取っているはずだ。
奴等は、24時間、必死に網を張っているのだから。
「光…」
「何、姉さん」
「しばらく、また旅に出ましょう…落ち着くところは、その途中で探すわ」
「そう、姉さんがそう言うなら、ついて行くよ」
美琴は悲しい目で光をじっと見つめ、ぎゅっと胸に抱きしめた。
「ごめんね、せっかく穏やかに暮らしてたのにね…」
光の髪に顔を埋めて息を吸い込むと、愛しさに涙が溢れてくる。
そのまま窓の外に目をやる。
怪しい人影は見えない。
目を閉じ、感覚を解放して索敵すると、まだ遠いがここに向かう霊気のベクトルを感じた。
美琴は抱きしめていた光を離すと、光の髪を一本抜いた。
「?」
それをテーブルの上に置いて美琴が何か唱えると、何だか急にそれが存在感を増した気がした。
「光のコピーロボットみたいなものよ」
そう言って美琴は神棚に祀っていた何かを取り出し、懐にしまった。
「行こう、光」
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