嘘で救われる僕と、救われるという嘘 その1~2

13/31
前へ
/31ページ
次へ
 何とも急な旅立ちだが、光は美琴が一緒なら、一箇所に留まることにこだわりは無かった。  部屋の中に自分の分身がいるような不思議な感覚に一度振り返り、美琴の後を追って部屋を出た。  「姉さん」  こんなピリピリした感じの姉を、以前にも見たような気がする。  「姉さん…何者なんだい?」  「わたし?…あなたに比べたら、ただの女よ」  崩壊しつつある封印、迫りくる追手、どこかのタイミングで、一度復元と再封印をしなければならない。  敵を退けて、消息を絶つ最適のタイミングで。  光理(ひかり)さま…!  美琴は、光の手を強く握りしめた。  その日の夕方には、電車を乗り継いで新幹線の駅に辿り着いた。  気配を絶って行動しているが、念のため真っ直ぐ目的地には向かわなかった。  追ってきていた気配は、一度アパートに行ったようだ。  だいぶ時間を稼げたと思う。  ここからの行先に具体的なあては無いが、教団の支部がある都市は把握しているので、そこは避けるつもりだ。  予定していた新幹線に乗り、走り出すと少し安心した。  このまま追手をまければ、また静かに身を隠せるかも知れない。  念のため気配を探るが、怪しい者はいない。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加