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何とも急な旅立ちだが、光は美琴が一緒なら、一箇所に留まることにこだわりは無かった。
部屋の中に自分の分身がいるような不思議な感覚に一度振り返り、美琴の後を追って部屋を出た。
「姉さん」
こんなピリピリした感じの姉を、以前にも見たような気がする。
「姉さん…何者なんだい?」
「わたし?…あなたに比べたら、ただの女よ」
崩壊しつつある封印、迫りくる追手、どこかのタイミングで、一度復元と再封印をしなければならない。
敵を退けて、消息を絶つ最適のタイミングで。
光理(ひかり)さま…!
美琴は、光の手を強く握りしめた。
その日の夕方には、電車を乗り継いで新幹線の駅に辿り着いた。
気配を絶って行動しているが、念のため真っ直ぐ目的地には向かわなかった。
追ってきていた気配は、一度アパートに行ったようだ。
だいぶ時間を稼げたと思う。
ここからの行先に具体的なあては無いが、教団の支部がある都市は把握しているので、そこは避けるつもりだ。
予定していた新幹線に乗り、走り出すと少し安心した。
このまま追手をまければ、また静かに身を隠せるかも知れない。
念のため気配を探るが、怪しい者はいない。
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