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光の頭に浮かんでいた疑問は美琴の声に打ち消され、現実に引き戻された。
出ていく姉を見送ると、リビングに戻ってテレビを見る。
光は二十歳で、姉の美琴は二十七だ。
姉は毎日働きに出ているのに、光は学校にも行っていないし、働いてもいない。
その事に、とくに疑問を感じたことは無い。
たまに、少し気になるが、考えようとすると何だか眠くなってくる。
姉の美琴は弟の光を溺愛していた。
「光、あなたは毎日ここで穏やかに暮らしていればいいのよ、お姉ちゃんが何でもしてあげるから」
その言葉通り、日常的な身の回りの世話を全部してくれて、光を養うために働いて、油断しているとお風呂にも入ってきて体を洗ってくれようとする。
そんな、異常なまでに弟を好きな姉が、とびきり美しいので光もドキッとさせられることが多い。
美琴はすらりとした体つきで髪が長く、知的で落ち着いていて、その信心深さに相応しく、巫女さんのように清楚な美しい女性だった。
こんな美しい年ごろの姉の生活が、自分を中心に回ってしまっていて、全く男のいる気配も無い。
いいのかそれで、と思いながら鏡で自分を見てみる。
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