嘘で救われる僕と、救われるという嘘 その1~2

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 具体的に家賃の金額とか聞いたことは無いが、それを払ったうえでとくに不自由を感じる生活ではないので、どういうわけか収入は足りているのだろう。  「光、今日は何してたの?」  ひとりで外出しないように言われてるから、今日はも何も無いのだが、そう聞かれた光がどぎまぎすると、美琴の目がちょっとエッチに輝く。  「お姉ちゃんのこと考えてた?」  それで赤くなってしまう弟を見て嬉しそうにしている。  ちょっとお互いに好きすぎるところはあるが、普通の姉弟だった…と、思っていた。  週末になると、美琴は光を外に連れ出してくれた。  なるべく自宅から出さずに、おとなしくさせておきたいようなのだが、あまり閉じ込めておいて目の届かない平日に勝手に行動されても困る。  外出の際には芸能人でもないのにサングラスと帽子を被せられる。  しかも、どちらも内側の目に付かない部分に怪しげなお札が貼られていた。  さすがに、信心深いというより変な新興宗教にはまっていることを疑ってしまう。  それでも、美琴と出かけられる週末は楽しかったから、余計な事は詮索しなかった。  何より、弟とのデートを楽しむ姉の少女のような笑顔を見るのが嬉しかった。
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