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記憶に残る美琴の感触に、また体が反応するのを止められなかった。
この、自分を取り巻くもやもやした、掴みどころのない世界は、姉を愛した自分への罰なのか?
いや、そうじゃなくて…。
何か掴みかけたように感じた思考は、またしてもすり抜けていってしまう。
そして、何を考えていたのか忘れた。
目を上げると、じっと美琴がこっちを見ていた。
そして、優しく微笑んでいる。
そう、いいんだ、幸せなら、それでいいんだ。
山中を切り開いた広大な敷地にそびえ立つ神殿のような建築物。
「雪絵さま」
建物の中の、古代ギリシャ風の大広間の中にある巨大な祭壇は、神社を思わせる作りだった。
何ともちぐはぐな施設だが、それを強引に納得させてしまう存在感を、雪絵とよばれた人物が放っていた。
巫女の姿、輝くような美貌と近寄りがたい迫力、側近の一人と思われる白装束の男も、離れた場所で跪く。
「何なの?いい知らせかしら?」
「昨日感知された微弱な霊気ですが…今日も複数の者が感じ取りました…まだ、おおよその方角しか探れませんが…」
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