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「ならば…その方角に何人でも送り込みなさい…あなたたちでは、そうでもしなければ役に立たないのでしょう?」
「御意に」
去って行く男を見送ったあとの、雪絵と呼ばれた女の目は、残忍な光を放っていた。
「琴乃…!」
その日も、出勤する姉を見送ると光はリビングのソファーに座り、テレビを点けた。
どうでもいい内容のワイドショーをずっと見ている。
実につまらない、くだらない時間だと思う。
なのに、それが心地いい。
何でも無いことが、当たり前のことが、とても幸せに感じる。
そんな境地に辿り着くような、僕は何を見てきたというのか?
突如崖っぷちに立って下を覗き込んだような感覚に襲われる。
何か、地獄のような記憶の端を掴みかける。
これ…は…?
それを手繰り寄せて開いてしまったら、何か大変なことになるような気がする。
それでも、掴まずにいられない。
何か、何だ、あれは…そう、姉さんが、神棚に納めた何か…!
確かめ…。
そのとき、玄関のドアが叩かれた。
ハッと我に返った光は、今何を考えていたのか忘れていた。
インターホンのモニターを点けて見ると、小さな女の子が映っている。
隣の…子か?
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