嘘で救われる僕と、救われるという嘘 その1~2

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 「ならば…その方角に何人でも送り込みなさい…あなたたちでは、そうでもしなければ役に立たないのでしょう?」  「御意に」  去って行く男を見送ったあとの、雪絵と呼ばれた女の目は、残忍な光を放っていた。  「琴乃…!」  その日も、出勤する姉を見送ると光はリビングのソファーに座り、テレビを点けた。  どうでもいい内容のワイドショーをずっと見ている。  実につまらない、くだらない時間だと思う。  なのに、それが心地いい。  何でも無いことが、当たり前のことが、とても幸せに感じる。  そんな境地に辿り着くような、僕は何を見てきたというのか?  突如崖っぷちに立って下を覗き込んだような感覚に襲われる。  何か、地獄のような記憶の端を掴みかける。  これ…は…?  それを手繰り寄せて開いてしまったら、何か大変なことになるような気がする。  それでも、掴まずにいられない。  何か、何だ、あれは…そう、姉さんが、神棚に納めた何か…!  確かめ…。  そのとき、玄関のドアが叩かれた。  ハッと我に返った光は、今何を考えていたのか忘れていた。  インターホンのモニターを点けて見ると、小さな女の子が映っている。  隣の…子か?
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